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書籍紹介『ペテロの葬列』①


ペテロの葬列ペテロの葬列
(2013/12/20)
宮部 みゆき

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『ペテロの葬列』は、『火車』や『模倣犯』等のベストセラーで知られる宮部みゆき社会派小説で、600ページを超える大部です。また、同名の連続ドラマが7月7日(本日)からTBS系列で放映される予定になっています(参考URL)。

エンディングの後味の悪さが各所レビューでの評価の低さにつながっているものの、小説という体を取りながら、社会問題を詳細に描写し、社会システムの本質や人間の業を浮き彫りにする著者の表現手法はいささかも衰えていません。この小説も登場人物やプロットは当然ながら架空の設定となっていますが、物語の背景は事実に基づいています。

タイトルからは読み取りづらいのですが、この小説が扱っている社会問題は悪徳マルチ商法です。そしてテーマはキャッチコピーにもなっている“「悪」は伝染する”というこのシステムの負の本質です。

主人公の杉村三郎は義父が経営するコンツェルンに勤める平凡な会社員ですが、ある日バスジャック事件に巻き込まれます。
犯人は小柄で背中も曲がっている白髪の老人でした。老人は、動機不明の中、人質になった7人に問いかけ、なだめすかしながら場を支配します。
結局、警察の突入を受けた際に老人は死んでしまいますが、直後の警察からの事情聴取に杉村はこう答えます。
――――――――――――――――――――――――――――――
「では拳銃ではなく、他の何を使って、佐藤さん(老人)は皆さんを掌握していたんでしょう。お考えはありますか」
私には答えの用意があったが。だが、すぐには口に出せなかった。自信がなかった。
「---弁舌です。」
信じてもらえないかもしれない。警察に通用する供述ではないかもしれないが、私にはそう思えた。
「ただ弁舌だけです。あの老人は、言葉で我々を支配し、コントロールしていました。私は自分がそういう状態に置かれていることに気づいていましたが、それでも抗えなかった。それぐらい巧みな掌握でした。」
『ペテロの葬列(P156)/宮部みゆき/ 集英社』

――――――――――――――――――――――――――――――

それから一ヶ月程が経ち、事件と“薄気味悪いくらい弁が立った”老人のことを忘れかけていた人質たちでしたが、それぞれに送られてきた多額の“慰謝料”を巡って、再び翻弄されます。
そして、その足跡を追っていくうちに、老人の過去が徐々に明かされていきます。
――――――――――――――――――――――――――――――
「おそらく、<トレーナー>だったんだろう」
(中略)
「1960年代から70年代半ばにかけて、つまり高度成長期だな。企業の新入社員研修や管理職教育に、ひとつのブームがあったんだ。<センシティビティ・トレーニング>というのだがね」
(中略)
「個人の内面を掘り下げることによってその能力を活性化し、同時にその個人が小集団の中でふさわしい働きをするように、協調性も培う」
『ペテロの葬列(P294)/宮部みゆき/ 集英社』

――――――――――――――――――――――――――――――

一見したところ通常の企業研修の範疇に思えるセンシティビティ・トレーニングですが、この手法は大きな問題を孕んでいました。
――――――――――――――――――――――――――――――
有り体に言えば、誰でもトレーナーになれる。義父の口調は苦々しかった。
「STの効果と手法を熟知しており、自身もそこから様々な意味で恩恵を受けており、頭の回転が速く、口が達者な人間ならな」
(中略)
「極端に閉鎖的な上下関係のなかでは、ちっぽけな権力を握ったちょっとばかり上位の人間が、それにふさわしい能力も資格もないのに、下位の人間の生殺与奪の権を完全に握ってしまうことがある」
(中略)
「有能で冷静で、自分の持つ力をよくコントロールできるトレーナーならば、STで良い効果をもたらすことができる。私が聞かされた社員教育の成功例は、そんなケースだろう。だが自殺者が出るようなケースでは、トレーナーが間違ったんだ。方法を間違ったんじゃない。人間として間違ったんだ。
極限状態のちっぽけな権力に酔い、己の中の獣性を開放した」
(中略)
STは、トレーナーという立場の人間をそのように仕向ける危険性を孕んだシステムだ。
『ペテロの葬列(P300)/宮部みゆき/ 集英社』

――――――――――――――――――――――――――――――
つまり、リーダーとしての資格の無い者が、人を操る快感を覚え、無軌道にその力を行使していく、そんな危険性を持った仕組みなのです。

そして、その魔力はトレーナー達をついには次のような境地へと導きます。
――――――――――――――――――――――――――――――
「連中だけじゃなく、ほかの同業者を探して話を聞きにいったこともある。とにかく連中の内幕を知りたかったからな。それで気づいたことがある」
みんな同じ目をしているんだ、という。
(中略)
「人を見る目じゃない。ものを見る目だ」と義父は言った。
「考えてみればそれは当然なんだ。人は教育できる。だが連中が目指すのは教育じゃない。<改造>だ。人は改造などできない。改造できるのは<もの>だよ」
彼らは一様に熱心だった。自分のしていることを正しいと信じていた。
「確信を持って、私に向かってきた。私を説得できる。私にも自分の信念を共有させることができる。私をコントロールすることができる。そうして熱心に語れば語るほど、ものを見る目つきになって私を見るんだ。分解して掃除して組み立て直せばもっといい音が出るようになると、古ぼけた鉱石ラジオを手に取る子供みたいな邪気のない顔でな」
『ペテロの葬列(P308)/宮部みゆき/ 集英社』

――――――――――――――――――――――――――――――
センシティビティ・トレーニングによって、人の心を操作できる、改造できる、このような信念とスキルを持った者が大量に生み出されました。
参考文献

このセンシティビティ・トレーニングの手法が悪徳マルチ商法とどのような関係を持つのでしょうか。
書籍紹介『ペテロの葬列』②』に続きます。


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トポタンさん

実は私はテレビの方は見ることができなかったのですが、
いい出来だったのですね。
来週以降はできれば観るようにしたいですね。

このブログがお役に立てているようで嬉しいです。
今後もお気軽にコメントして下さい。

ドラマ見ました

はじめまして
マルチに誘われる事が多いので対策のためにいつも勉強させて頂いています。

ここでマルチの話だって知って、ぺテロの葬列を見てみました。
二時間だったけど長さを感じさせず面白かった!
長塚京三さんはまり役でした。
来週からも楽しみです。

このドラマでマルチの危険性をみんな知ってもらえれば良いのにと思います。
プロフィール

ゆんた

Author:ゆんた
経営コンサルタントの管理人がニュースキン(Nu skin)やアムウェイ(Amway)を始めとするネットワークビジネス、マルチ商法、マルチレベルマーケティング、MLMの仕組みを解き明かします。

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