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書籍紹介『洗脳 地獄の12年からの生還』~書き換えられる記憶



洗脳 地獄の12年からの生還洗脳 地獄の12年からの生還
(2014/07/24)
Toshl

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※前回の記事はこちら

半ば強引にセミナーに参加させられることになったToshiですが、さっそく洗脳のテクニックを仕掛けられていきます。

――――――――――――――――――――――――――――――
最初に始まったのは、「出会いの実習」だった。
「まずは部屋の中を歩き回って他の誰かと無言で出会ってください。出会ったときにどんな反応をしたくなるか、自分を見てください。次に、出会った相手に対しどう感じたかを『近づきにくいです』、『近づきやすいです』、『よく分かりません』の三つから一つを選んで相手に伝えてください。では始めてください」
MASAYAがマイクで言うと皆一斉に動き出した。
(中略)
ところが、出会った10人ほどの全員から僕は「近づきにくいです」と言われ続けてしまった。それを言われるたびに僕はショックを受けた。最後のほうで守谷に出会った時は僕は「近づきやすいです」と言ったが、守谷は「よくわかりません」と言った。これで完全にへこんだ。僕はこれまで自分のことを内心親しみやすい人間だと思っていた。きっとそれは思い過ごしだったんだ。
『洗脳 地獄の12年からの生還(P56)/Toshi/ 講談社』

――――――――――――――――――――――――――――――
この手のカルト団体の常套手段ですが、洗脳を仕掛けようとする対象者の自我を揺さぶろうと働きかけてきます。このような揺さぶりを受けると対象者は自分に対する自信を失い、洗脳者が提示する新しい価値観を受け入れる心理状態になっていきます。
Toshiも「出会いの実習」で周りから否定され続けることで、自分自身に対する自信が揺らいでいきます。

――――――――――――――――――――――――――――――
セミナー二日目は「シェアー」で始まった。子供の頃の悲惨な体験やそのときの自分の気持ちをみんなの前で喋り、お互いにその体験を共有する実習だ。
(中略)
セミナーではひどい体験を汚い言葉で話せば話すほど、「オーケー、オーケー。いいよ」とMASAYAに褒められる。逆に普通のことしか言わないと、「こんなことがあったんじゃないか?」「兄貴からこんなことを言われたんじゃないか?」「よほどのことがないと、おまえのようにはならないからなあ」と、誘導していく。そして、その誘導で、話は悲惨な方向、過激な方向に進み、どんどん誇張されて歪められていくことになる。
(中略)
MASAYAと話をしていくうちに、兄たちが本当にひどい虐待をしてきたように思えてくる。そして母親は自分のために息子をスターにしたかっただけだなどと思えてくるのだ。
『洗脳 地獄の12年からの生還(P58)/Toshi/ 講談社』

――――――――――――――――――――――――――――――
記憶というものは嘘をつきます。
巧妙な心理操作によって誘導されると、人の記憶は比較的容易に書き換えられてしまうのです。
Toshiも「シェアー」でのMASAYAの誘導によって、自分の家族がもともと悪意を持って自分に接してきたんだと考えるようになっていきます。

――――――――――――――――――――――――――――――
そのことを嘆き、そんな育てられ方をされた恨みや怒りを身体全体で表現する「セラピー」が始まった。たとえば、床に丸めたマットレスを、親や兄に見立ててそれに向かって怒りをぶつける。初めはなかなか思うようにできなかった。特に親や兄のことを悪く言うことができず、しまいには気分が悪くなり吐いてしまった。
MASAYAの大声が聞こえる。
「いいもの好き、優しいもの好きだから、悪いことも本当の気持ちも言えない」
「ものすごい抵抗がある。すごいブロック。だから吐いてしまう」
「そんなものは親がおまえをおとなしくさせるために植え付けただけだ」
「そんなものは捨てて自由になれ!ぶち壊せ!」
(中略)
おもちゃのナイフを男性参加者から渡された。
「そのナイフで、母親のはらわたをえぐりだしてずたずたにしろ!」
「兄貴の目ん玉をえぐり出せ! 二度と生き返らないようにぶっ殺せ!」
「ウォー!!この野郎、死ね 死ね 死ね~!」
僕は狂ったように泣き叫び怒りを吐き出した。
『洗脳 地獄の12年からの生還(P60)/Toshi/ 講談社』

――――――――――――――――――――――――――――――
新たに植え付けられた考えを固めるのは感情です。
強い感情を伴いながら想起し続けると知識や観念は強固になります。
Toshiは「セラピー」において殺人を仮想体験することで、家族に対する憎悪を強固なものにしていきます。

このように矢継ぎ早に洗脳のテクニックを受けたToshiの心は次第に変貌していきます。


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書籍紹介『洗脳 地獄の12年からの生還』~ブラインド勧誘

洗脳 地獄の12年からの生還洗脳 地獄の12年からの生還
(2014/07/24)
Toshl

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※前回の記事はこちら

周囲の反対をよそに妻の守谷香への依存を強めていくToshiは、誘われるがままに屋久島に旅行に行き、「レムリアアイランドリゾートホテル」いうヒーリングリゾートを訪れます。
そして敷地内にある美術館を見学して帰京した後、今度は同じプロデューサーが都心で主宰しているヒーリングライブへと参加します。

――――――――――――――――――――――――――――――
ほどなくMASAYAがステージに登場する。ステージといっても少し段差があるだけの簡易ステージで良く顔が見えた。年齢は四十歳くらいであろう、鼻が高く、大きな目は少したれ気味で、昔風のいい男といった顔立ちだった。
(中略)
コンサートが進むにつれ、さらに肩を震わせて泣き出す人も出てきて、会場は異様な雰囲気になっていった。
(これは何かおかしな宗教の集まりかもしれない)
そんな考えが頭をよぎったが、隣の守谷を見ると、やはり前列の人たちと同じようにうつむいて涙を流してMASAYAの音楽に聴き入っていた。僕は自分だけが感動できずにいるような状況のなかで、(感受性もない、涙も出ない、僕こどひどい人間なのかも)とも思えてきた。
『洗脳 地獄の12年からの生還(P41)/Toshi/ 講談社』

――――――――――――――――――――――――――――――

このMASAYAなる人物こそが以降十数年に渡り、Toshiを洗脳し続ける張本人の倉渕雅也氏です。
ライブ終了後、MASAYAはToshiに近寄り、自己紹介を始めます。
――――――――――――――――――――――――――――――
「幼少時から芸能界で歌手デビューし、その後、十九歳で企業を立ち上げ、学生ツアーなどのブームをつくったんです。二十代前半で六本木などにディスコやカフェバーを何軒も持っていて、二十代半ばで与論島にあるプリシアリゾートを創設し、リゾートブームの先駆けとなりました。そして、二十七歳で一部上場企業の史上最年少の役員になり、地位や名声はすべて手にいれたんですが、競争や足の引っ張り合いの中で虚しいだけでした。そんなとき、ある女性社長に誘われてセミナーを受けて人生が変わったんです。自分も頂点に立ったことがあるので、あなたの気持ちはすごくよくわかりますが、そこに幸せはなく、虚しいだけですよね。」
『洗脳 地獄の12年からの生還(P43)/Toshi/ 講談社』

――――――――――――――――――――――――――――――

後になって分かりますが、この経歴は事実も含まれているもののかなりの部分が誇張されたものでした。しかしそれに気づかないToshiはすっかりMASAYAという人物に魅了され、今度は彼が主宰するセミナーに申し込みますが、セミナー当日39度近くの高熱が出て参加することが困難になってしまいます。
――――――――――――――――――――――――――――――
担当だった女性スタッフの山田(仮名)に「今日はいけません」と告げる。ところが山田は納得しない。
「どうしてもこれませんか?」
「ええ無理です」
一旦は電話を切るが、その数分後に山田からまたかかってくる。
「これがあなたの本質に出会う最後のチャンスです。ほんとうにもったいないことです」
(中略)
「そうやってせっかくのチャンスを無駄にするのがあなたのいつものパターンではありませんか、本質に触れるのを怖がっているのではないですか、申し込んだ時点でもうセミナーは始まっているんです」
「いやそんなことないし、僕もできれば行きたいのですが熱があるし・・・」
「そうですか、これが最後のチャンスです。少し遅れてもいいから来てください」
そう言われ電話を切る。相手のしつこさに少々頭にもきたが、
(きっと僕のことを思って言ってくれているのかな)
とも思った。
『洗脳 地獄の12年からの生還(P49)/Toshi/ 講談社』

――――――――――――――――――――――――――――――

“自分のことを大事にしているために厳しく接する”と考えてしまうのは洗脳やマインドコントロールを受けやすい人によく見られる心理状態です。
もちろん実際にそういう意図がある事もあるのでしょうが、洗脳やマインドコントロールに長けた個人や組織は、これら被害者特有の心理状態を悪用し、恩を着せることによって、精神的支配を強めていくことを得意とします。

いずれにしてもこれら屋久島から、美術館、ライブ、セミナーに至る一連の流れは、MASAYAがToshiを手中に収めるために全て予め計算されたものでした。
俗にブラインド勧誘と呼ばれるものですが、勧誘のターゲットとする対象に最初は正体を隠して近づき、様々な活動を通じて人間関係を構築しながら、徐々にその正体を明かしていく手法です。
ネットワークビジネスを規制する特定商取引法では違法とされる行為ですが、今でも常習的に用いられている手法でもあります。

こうしてセミナーへと誘導されたToshiは集中的で強力な洗脳を受けることになります。

「書籍紹介『洗脳 地獄の12年からの生還』~書き換えられる記憶」に続きます。

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現役ディストリビューターの方へ質問です

あなたが所属している会社あるいはグループを念頭に置きながら、以下の質問に答えてみて下さい。

①勧誘前に会社名やネットワークビジネス(MLM)であることを伝えられていなかった。
②成功者やリーダーの教えを信じて疑わないように言われている。
③外の世界のことを極端に悪く言う。
④ダウンラインの個性を尊重しない。
⑤グループでは極端に厳しい生活上の決まりごとがある。
⑥ネットや家族・友人から情報を得ることを禁止している、または勧めない。
⑦サラリーマン等の従来の働き方を極端に軽蔑している。
⑧一般企業で働く事に対して積極的でない。
⑨ダウンラインの自主性やプライバシーを尊重しない。
⑩ダウンラインの過去や人間関係をバカにする。

これらの質問は、アメリカにおいて青少年、特に大学新入生を持つ親の必読書といわれる『カルト教団からわが子を守る法(反カルト宗教緊急翻訳出版) 』内で挙げられている“カルトのチェックリスト”を、ネットワークビジネスのディストリビューターに向けて書き換えたものです。
※もともとの質問内容
①勧誘方法は良心的か
②教祖や教団組織に盲従するようにしていないか
③教団組織の外の世界を極端に悪く言わないか
④信者の個性を尊重するか
⑤異常に厳しい生活上の決まりはないか
⑥外部の情報を自由に得られるか、またそれらの情報への態度はどうか
⑦伝統的宗教を極端に軽蔑していないか
⑧一般の学校への進学に積極的か消極的か
⑨信者の自主性やプライバシーを尊重しているか
⑩信者の過去の出来事や人間関係をバカにしていないか

ネットワークビジネスは元々宗教的な特徴を持つ組織ですが(参考記事)、一部の悪徳グループではトップ層がマインドコントロールのテクニックを用いながらダウンラインを搾取するカルト宗教のような傾向を強めていきます。
上記の質問に対して“はい”と答える数が多い場合、あなたの所属しているグループは極めて問題がある組織だと考えて差し支えありません。
これまで信じてきた前提を見直して、騙されていたり、自分自身が加害者になっている可能性について向き合う時が来てると考えるべきでしょう。


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書籍紹介『洗脳 地獄の12年からの生還』~周囲への反発


洗脳 地獄の12年からの生還洗脳 地獄の12年からの生還
(2014/07/24)
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※前回の記事はこちら

俳句調のメッセージがしたためられた手紙によって、Toshiの心の隙にうまく入り込むことに成功した守谷は徐々にその本性を表わしていきます。身内の人間からToshiを引き離しにかかるのです。
――――――――――――――――――――――――――――――
「トシさんのお母さんも、お兄さん(長兄)も、ヨシキさんも、周りの人間すべて、みんな自分に都合のいいようにトシさんを利用してきただけでしょ?もうそんなことに振り回されるのはやめようよ!私はもううんざりよ!」
僕の腕を両手でつかみ、強く僕の体を揺さぶりながら、泣いて訴える守谷の顔は初めて見るような怖い表情をしていた。大粒の涙を流しながら怒る彼女に「僕のことを本気で考えてくれているんだ・・・信じられるのは彼女だけだ」と思うようになっていった。そして僕は次第に周囲の人間と距離を置くようになり、まるで守谷という洞穴にこもるような精神状態になっていった。
『洗脳 地獄の12年からの生還(P30)/Toshi/講談社』

――――――――――――――――――――――――――――――

狙いをつけたターゲットに対して、身内の者への不信感を煽り、引き離しにかかるというのはカルト組織の常套手段です。なぜならターゲットが依存(信頼)する対象を自分達の組織へ限定させることができれば、思考や行動をコントロールすることが容易になるからです。

一方でそんなToshiに対して忠告をする人もいました。
それは次兄でした。銀行での社会人経験が長い次兄をToshiは信頼しており、トラブルが起きた後の会社経営を任せていました。
――――――――――――――――――――――――――――――
次兄は直接僕に守谷に対する辛辣な言葉を並べた。
「守谷は演技をしているだけだぞ」
「自分が生きてきた銀行業界の常識では、ああいう感じの人は最も危ない」
「あんな目をした女には気をつけた方がいい」
そんな厳しいことを言う次兄に対し、僕は、「ひどいこと言うなよ」と反発した。
『洗脳 地獄の12年からの生還(P35)/Toshi/講談社』

――――――――――――――――――――――――――――――

結果的には次兄は守谷の正体を見抜いており、正しい忠告をしていた事になります。
しかし、次兄の忠告は裏目に出てしまいます。

友だちを悪徳グループから辞めさせたいという方に対する真一さんのアドバイスにもありましたが(参考記事)、人は問題があると薄々気づいていても、面と向かって言われるとそれを認めたくないものだからです。
そして自分が信じているものを否定しようとする人や意見に反論すべく、そうでない証拠を集め始めます。それはしばしばその組織が自らを正当化するために発信している情報を元にしたものとなり、結果として組織に対する確信を強めることが多いのです。

Toshiは周囲の反対や心配とは裏腹に、より一層守谷への依存を高めていき、やがて結婚します。そしてすかさず守谷はToshiに対する本格的な洗脳を行うための次なる罠を仕掛けます。
――――――――――――――――――――――――――――――
入籍した直後のある日、守谷が嬉しそうな声で僕に言った。
「屋久島に行きたい。あのCD(注:二人で一緒に居る時に守谷がいつも聞いていたCD)で聴いていたMASAYAさんのプロデュースしているヒーリングリゾートがあるんですって」
『洗脳 地獄の12年からの生還(P36)/Toshi/講談社』

――――――――――――――――――――――――――――――

この誘いはToshiへ本格的な洗脳を仕掛けるべく予め仕組まれたものでした。この旅行をきっかけにしてToshiの日常は大きく変わります。

書籍紹介『洗脳 地獄の12年からの生還』~ブラインド勧誘」に続きます。

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書籍紹介『洗脳 地獄の12年からの生還』~心の隙


洗脳 地獄の12年からの生還洗脳 地獄の12年からの生還
(2014/07/24)
Toshl

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何事もそうですが、洗脳にもきっかけがあります。
X JapanのToshiが洗脳という特殊な状態に陥ってしまったきっかけは、彼自身がロックスターとして成功したことから生じた家族の変貌・崩壊がありました。
――――――――――――――――――――――――――――――
僕が、有名人になり、多額のお金を生み出す利権そのものになったがゆえに、まるで、長兄や母親自身がスターにでもなったかのような勘違いの言動、さらに、今まで僕が知らなかった彼らの強欲さを知り、それまで僕が思い込んでいた「良い家族像」が崩壊していく現実を身をもって知ることとなった。僕は大きな失望感とともに、深い自己嫌悪に陥っていた。
(中略)
自分が憧れ、必死で目指してきたロックスターの座。日本の中ではある程度その地位や名声は得た。そしてそうなることが親孝行、家族孝行だと思っていた。だが、結果はその逆-家族不信、友人不信、そして自分不信となってしまった。気がつけば周囲にはトラブルだけが蔓延していた。
そして、メンバーとの間にも、深い溝のようなものが自分の中にできていた。
(何を、誰を信じればいいんだ・・・)
突然、頼れるもの、信頼できるものが何一つなくなってしまった。大きな不安の渦にのみ込まれていくような感覚に僕は震えが止まらなかった。
『洗脳 地獄の12年からの生還(P21~23)/Toshi/講談社』

――――――――――――――――――――――――――――――

このような不安を抱える中、Toshiはある女性との交流を深めていきます。その女性は以前舞台でToshiと共演した女優でしたが、「XのToshiさんには興味がない、本当のあなた自身のことを想っている」という言葉が「これまで有名人としての自分に近づいてきた女性たちとは違う」とその時のToshiには感じられたそうです。そしてこの女性こそが、以降12年間にも渡ってカルト教団の教祖とともにToshiを搾取し続ける守谷香だったのです。
――――――――――――――――――――――――――――――
守谷からの手紙が頻繁に届くようになっていたのは、そんなときだった。
孤独感に苛まれていた僕の心の拠り所は、守谷からの手紙だけになっていた。
(中略)
「いろいろ大変でしたね。がんばった体さんと心さんをぎゅっと抱きしめてあげてくださいね。よくがんばったねって・・・」
大粒の涙をためながらそういう彼女に、すさんだ心が癒されていくように感じていた。
そして彼女は、五七五の俳句調のメッセージを書いた100枚を超える短冊をプレゼントしてくれた。その中の一首に僕は涙が止まらなくなってしまった。
「死ぬときは、手と手をつなぎ、逝きましょう」
家族も、友人も、仲間も、信じるものすべてが失われたように思われ、孤独にあえいでいた僕の心にその言葉が沁み渡った。
その後、ほどなくして、守谷と交際を始めるようになった。
『洗脳 地獄の12年からの生還(P23~25)/Toshi/講談社』

――――――――――――――――――――――――――――――

Toshiのケースに限らず、このような騒動が起きると決まって“洗脳されやすい人の性格はどういうものか”という議論がおきます。
もちろん洗脳されやすい性格というのはあるでしょう。一般的には人の言うことを素直に聞き過ぎたり、流されやすい人は洗脳されやすいと言われています。
しかしだからと言って、自分は洗脳されるタイプでは無いと安心してしまうのは早計です。なぜなら洗脳やマインドコントロールの手口は巧妙化・高度化しているので、“状況”次第では誰でも絡め取られてしまう可能性があるからです。むしろ根拠なく自分は大丈夫だと考えている人の方が危険だとも言えるしょう。

洗脳されやすい状況というのは、現状への不満や将来への不安が強くなるような環境変化が起きているタイミングです。分かり易いところで言うと、死別、離婚、病気、失業、借金といったネガティブな環境変化が挙げられるでしょう。また、結婚や出産といった一見祝福すべき状況でさえ、捉え方によっては将来への不安を掻き立てる要因になります。
これらの状況の下、不安定な精神状態に置かれていると、カルト宗教や悪徳グループが差し出す“救い”や“解決策”にすがりたくなるのです。

Toshiの場合も家族が変貌・崩壊してしまう事への不安・不満がカルト宗教の侵入を許すきっかけになりました。自分を取り巻く環境が変化することで不安や不満に駆られる時期や瞬間は誰にでも訪れるものです。そのような時に優しい言葉で接触されると、心のガードが甘くなり、洗脳者が仕掛ける欺瞞の世界へ足を踏み入れてしまうのです。

書籍紹介『洗脳 地獄の12年からの生還』~周囲への反発」に続きます。


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洗脳とマインドコントロール

洗脳 地獄の12年からの生還洗脳 地獄の12年からの生還
(2014/07/24)
Toshl

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X JapanのボーカルのToshiがカルト宗教団体「ホームオブハート」に洗脳され、脱会するまでの一連の騒動は芸能史に残る一大事件だったと言っていいでしょう。
そのToshiの手記が先日出版され、話題を呼んでいます。

――――――――――――――――――――――――――――――
僕はその裏切りには全く気付くことはなかった。
長年にわたり、人を騙し続けること。それはある意味「人を殺害する」その行為以上に残虐ともいえる。
人の心を操り、それをどこまでも繰り返すこと。それが「洗脳」という恐ろしさである。
十二年間にわたる洗脳の日々。そのすべての真実をここに書き下ろします。
『洗脳(プロローグ)/Toshi/講談社』

――――――――――――――――――――――――――――――
洗脳から脱会に至るまでの経緯、そしてその間の心の動きが詳細に記録されており、今後の洗脳研究における第一級の資料になると思われます。

また、このブログがテーマの一つとしている悪徳グループのマインドコントロール手法を分析する上でも参考になるところが多く、今後数回にわたって取り上げていきたいと思いますが、その前に整理しておきたい論点があります。
それは洗脳とマインドコントロールの区別です。

たとえばWikipediaでは洗脳とマインドコントロールは以下のように記載されています。
――――――――――――――――――――――――――――――
【洗脳】
ある人の思想や主義を、根本的に変えさせること
【マインドコントロール】
強制によらず、さも自分の意思で選択したかのように、あらかじめ決められた結論へと誘導する技術、またはその行為のこと

――――――――――――――――――――――――――――――

その他にもいろいろな定義が見受けられますが、“洗脳とマインドコントロールの双方とも人の思考や意思決定を恣意的に誘導しようとする精神操作の技術であり、その中でも特に肉体的な強制や圧力を伴うものを洗脳と呼ぶ”というように整理されていることが多いようです。

いずれにしても仕掛ける側からしてみれば金品や労働力を搾取しようとすることが目的であり、仕掛けられた本人や周囲の人達にとっては一刻も早く解くべき状態であるという事に変わりはありません。また、洗脳に固有の手口とされる暴力や薬物による精神操作が用いられることはかなり特殊であり、ほとんどのケースで同じ手法が用いられています。
ですから、個人的には洗脳とマインドコントロールを区別することにあまり意味は無いと考えており、ブログ記事でも特別に言及しない限りは同じものとして扱っていきます。

ただし悪徳グループに所属しているメンバー、つまり精神操作を仕掛けられている当人達とコミュニケーションを取る際には注意が必要です。両者の違いを明確に理解しておくだけでなく、原則としてこれらの言葉を使わない方がいいでしょう。
なぜなら、彼らは“洗脳とマインドコントロールの違い”や“洗脳やマインドコントロールと言われたときの対応”を反論処理として刷り込まれています。ですから安易に洗脳やマインドコントロールという言葉を使ってしまうと、「この人はネットワークビジネスを誤解しており、対等な議論に値しない人である」と見做されてしまいます。その結果、元々難しいものとされている洗脳やマインドコントロールからの説得がさらに難しくなる可能性があるのです。

書籍紹介『洗脳 地獄の12年からの生還』~心の隙」に続きます。


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書籍紹介『ドアの向こうのカルト』③


ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録
(2013/01/18)
佐藤 典雅

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書籍紹介『ドアの向こうのカルト』①』『書籍紹介『ドアの向こうのカルト』②』では、カルト宗教の元信者である著者が宗教とマルチ(ネットワークビジネス)の共通点について指摘していることを見てきました。

続けて著者はある“気づき”について言及します。
――――――――――――――――――――――――――――――
次に私が不思議に思ったのは、複数のマルチ団体の商品パッケージがみんな同じプラスチックの入れ物に入っていたこと。自分はデザイナーだったので、この視点から見ると実に不可解な話だ。通常はブランディング上、企業はそれぞれパッケージのデザインや素材を変えるはずだ。
「もしかしてマルチはみんな実は同じ工場でつくっているのでは?そしてブランドラベルだけを変えて売っているんじゃないか?」
そう思ってネットで調べた。そうしたら私が加入していたマルチも含め、大手の何社かは本社がユタ州にあった。
「ユタ州?モルモンの州じゃないか!!」
これには驚いた。モルモン教徒の布教活動は、エホバの証人の形態に非常に似ている。マルチの会員の組織構成も証人たちのそれに酷似している。モルモンとマルチは繋がりが深いかもしれないと思った。
「モルモンが、自分たちの生計手段のために生み出した仕組みでは?」
そう考えると腑に落ちる。もっとも、未だに本当にモルモン教徒がマルチの仕組みを開発したかどうかは分からない。いずれにしてもマルチ共同体と宗教共同体の親和性が高いのに変わりはない。
『ドアの向こうのカルト(P183)/佐藤典雅/ 河出書房新社』

――――――――――――――――――――――――――――――
実際のところ、モルモン教がマルチの仕組みを生み出したかどうか微妙なところです。後にアムウェイ社が買収するニュートリライト社(カリフォルニア州が本拠地)が始めたという説も有力だからです。
いずれにしても、モルモン教が似たような仕組み(絶対性、純粋性、選民性、布教性)を持っていたが故に、ユタ州から多くのマルチ主宰会社が生まれたのは確かでしょう。

著者が気付いた“マルチはみんな実は同じ工場でつくっているのでは?”という点についての推測も現時点ではエビデンスが無いので分かりません。しかし、ユタ州に本拠地を置くマルチ主宰者会社が工場を共有している可能性は十分にありえます。
もっともこれもビジネスの世界では常識の範疇です。OEM生産と呼ばれる経営手法で、生産は外部工場を使い、完成品に自社製品としてのブランドを冠するのです。

もっとはっきり言ってしまえば、ほとんどのネットワークビジネス主宰会社はこの方法を採用しており、あちこちから売れそうな製品・商品を探して(製品企画から入る場合もあります)買い付けているのです。そしてそれに自社ブランドを載せて売るのです。
その際に創業物語に加えて、マルチレベルの報酬システムによる“成功物語”を付与しながら、ディストリビューターを通じて販売するのが他の業態とは異なるネットワークビジネス社独自のビジネスモデルなのです。

そして著者は次のような根本的な疑問を持つようになります。
――――――――――――――――――――――――――――――
後日、私が属していたマルチの大きなイベントに行ってみた。証人の地域大会と雰囲気が全く変わらないので驚いた。講演者の煽り方といい、そこに来ている人たちの反応は宗教信者そのものであった。その時に私はマルチから手を引いた。私は一つの宗教を抱えるだけでも苦労している。ここにきて二つの宗教を抱えるのは無理だと思ったからだ。ただこの時にある疑問が頭をかすめた。
「もしかして、ものみの塔もマルチの一種?」

――――――――――――――――――――――――――――――

マルチへの関わりをきっかけとして、著者は幼い頃から取り組んできたカルト宗教活動を辞めることになります。
経験者にしか書けないカルト体験の本質に迫る傑作ですので一読をお勧めします。


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書籍紹介『ドアの向こうのカルト』②


ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録
(2013/01/18)
佐藤 典雅

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書籍紹介『ドアの向こうのカルト』①』では、カルト宗教の元信者である著者が宗教とネットワークビジネスの共通点について指摘していることを見てきました。

著者はその他にも興味深い指摘をしています。
――――――――――――――――――――――――――――――
私は自分が加入していたマルチ団体のパンフレット・キットを見ていて、不思議に思った。世界中の会員と家族になれるといった謳い文句が並んでいる。そしていろいろな人種の会員が、笑顔で写真に登場する。
「なんか、ものみの塔の伝道パンフレットみたいだな・・・」
写真のトーンがそっくりなのだ。しかも複数のマルチ団体を調べたが、みんな設立ストーリーが同じ方式になっている。団体のトップの人の写真は、証人のようにきちんとしたスーツを着て、大きな笑顔で写っている。そして大抵、自分の家族の身に起きた不幸物語が書いてある。自分の母親や子供が病気になったというものだ。そしてそれを治すために自分の商品を開発したというお涙頂戴の切り口。
「なんでみんな同じような物語なんだ?こういうシナリオのフォーマットを裏で売っている奴(作家)がいるのか?」
そしてマルチ会員が、いかにビジネスを通じて人生が改善されたかを証言している。貧乏生活から抜け出して、今は家族でクルーズ生活にいける、といった内容だ。
「真理のおかげで、不幸を脱出できたという証人たちの話に近いぞ」
『ドアの向こうのカルト(P183)/佐藤典雅/ 河出書房新社』

――――――――――――――――――――――――――――――
確かに似たような創業物語を持つネットワークビジネスは数多くあります。有名どころではニュースキン社やハーバライフ社にもこの手の形式の物語があります。
さすがに一人の作家が物語を書いているという事は無いと思いますが、成功しているネットワークビジネス企業のやり方を真似しているうちに、創業の物語まで似てくることは十分に考えられます。

もっとも、ビジネスの世界では製品マーケティングや企業ブランディングにあたって、物語の力を利用するのは常識になりつつあります。物語には人の感情を揺さぶる普遍的な構造があり、これをうまく利用することで顧客維持や従業員のモチベーション向上につながると考えられているからです。

しかし物語をビジネスに利用する場合には、事実に基づいたものである必要があります。そこに嘘や行き過ぎた脚色があることに気づかれてしまうと途端に離反されてしまうからです。つまり一度裏切られたという感覚を持たれてしまうと、二度とその企業がつくる製品を買うことは無いと思われてしまうのです。
『おバカな主婦のニュースキン体験談』のえどがわこまちさんもニュースキンの創業物語が作り話ではないかという疑いが一つのきっかけとなり、ビジネスを辞めることになりました。(参考URL
※管理人はニュースキン社の創業物語が作り話であるという根拠は確認していません。

特に近年ではネットの力を利用することで個人でもかなりの情報収集ができてしまいます。物語に事実と異なる部分があれば、すかさず指摘され、広く公開・批判されてしまうことにもなりかねません。物語の力をあざとく利用しようとする企業はかえって大きな損失を受ける可能性があるのです。

書籍紹介『ドアの向こうのカルト』③』に続きます。


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書籍紹介『ドアの向こうのカルト』①


ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録
(2013/01/18)
佐藤 典雅

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カルト宗教として知られる“エホバの証人”の元信者による書籍を紹介します。著者は今でこそビジネスで成功し、東京ガールズコレクションの仕掛け人としても知られるようになりましたが、9歳から35歳までエホバの証人として教団活動していたそうです。
その体験談自体とてもリアルで(不謹慎ながらも)読み物として面白く読めるのですが、同書の中にはネットワークビジネスに関わる興味深い記載があります。

――――――――――――――――――――――――――――――
証人(注1)をしていると、必ず誰しも一度は、マルチ・ネットワーク・ビジネスの勧誘を受ける。マルチに関しては、ネズミ講だとかそうでないとかの議論があるが、私はどっちでもいいと思っている。ただし、マルチ形式のフォーマットが宗教に近いことは否めない。
(中略)
当初は収入の足しになると思い、加入して実際に販売もしてみた。しかし商品の売り方や会員の増やし方の仕組みが、証人たちの仕組みに似ていることに気が付いた。
「あれ、これは商品を売るだけでなく、売る会員を増やさないといけないんだ。」
なんか証人たちみたいだ。聖書を自分が勉強するだけではなく、自分も研究生を増やしていかないといけない。そしてその研究生もやがて自分の弟子を増やしていかないといけない。まるでマルチのヒエラルキーそのものだ。
『ドアの向こうのカルト(P180)/佐藤典雅/ 河出書房新社』
注1:エホバの証人の信者は自分たちの事を“証人(たち)”と呼びます。

――――――――――――――――――――――――――――――

さらに販売方法の共通点についても指摘します。
――――――――――――――――――――――――――――――
次に気になったのは、彼らの商品の売り方であった。
「このシャンプーを使えば絶対にハゲない」
「このサプリは他のマルチとは違うのよ。他社のは効かないわよ」
「このビジネスを通じて素晴らしい仲間が増えます」
うん?うん?なんか証人たちの主張と似ていないか?
「クリスチャンになれば絶対に幸せになれますよ」
「他の宗教は紛い物ですよ」
「素晴らしい信者の仲間が増えますよ」
『ドアの向こうのカルト(P181)/佐藤典雅/ 河出書房新社』

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そして宗教とマルチ双方に共通する要素として以下の4つを挙げます。
一、絶対性(これが絶対の宗教・商品よ!)
二、純粋性(私たちの教義・商品以外は信用できない!)
三、選民性(私たちの教団・商品は選ばれている!)
四、布教性(弟子をつくろう!)

著者はさらに考察を深めます。
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証人たちはもともと根が真面目で「絶対性」と「純粋性」を信じやすい素質を持っている。
だからマルチは彼らにとって、肌に合う商売であることには間違いない。
また、証人たちは宗教活動を行っているだけに、プチ教祖タイプの兄弟(注2)が数多くいる。一般人でもマルチでも活躍している人には、同じような教祖的なカリスマ性を備えている人が多い。ビジネス商談をしていても、マルチをしている人は一発で分かる。独自の教祖的オーラを放っているからだ。
『ドアの向こうのカルト(P182)/佐藤典雅/ 河出書房新社』
注2:エホバの証人では信者仲間のことを“兄弟・姉妹”と呼びます。

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以前記事にしましたがネットワークビジネス(=マルチ商法)はその仕組み上、宗教っぽくならざるを得ません(参考記事)。そしてその仕組みにうまく適応できる、すなわちランクを上げていく人には教祖的な性質が備わっていることが多いのです。
教祖的な性質が具体的にどのようなものであるかについては別の機会で分析します。

書籍紹介『ドアの向こうのカルト』②』に続きます。


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マインドコントロールの仕組み(ビジネス開始時)

これまでマインドコントロールの基本的な仕組み(参考記事)と勧誘時における具体例(参考記事)について見てきました。今回はビジネス開始時のマインドコントロールについてニュースキンビジネスを例に見ていきます。

ニュースキンの悪徳グループはビジネスを始めたばかりのメンバーに対して、性急にLOI申請するように唆します。極端な場合には、学校を卒業したばかりの20代そこそこの年齢で、LOI申請に伴うリスク(参考記事)を取れるだけの人脈、知識、スキル、資金が無いメンバーに対してLOI申請を勧めるようなケースすらあります。なぜそこまでさせようとするのかと言うと、ダウンラインがLOI申請することでアップラインは月24万円分のグループポイントが確保でき、かつ傘下のエグゼクティブが1名増えることでタイトルアップに近づくからです。

非常に問題が多いこのような選択を自主的に行わせるために、トップダウン情報とボトムアップ情報を制御するのがマインドコントロールです。

この段階で刷り込まれる典型的なトップダウン情報は「成功者はチャンスを逃がさない」でしょう。
この常識的とも言える信念をセミナー等を通じて刷り込みます。そしてそれを補完すべく「画期的な新商品の発売」や「アジア市場での伸びがすごい」といった具体的な情報を次々に提示することで、今が最大のチャンスという空気を創り出します。

また、「成功者はリスクを取る」というトップダウン情報も申請を後押しする上で重要です。そして、この考えに真実味を加えるために「成功者の誰々は借金をしてこのビジネスに取り組んだけれども全額返済した」といったボトムアップ情報が提示されます。

これらの双方の情報を十分に受け付けられた後に「成功したいという」という夢に対する答えを出そうとすると、自然とそれは「今すぐにLOI申請を出すべき」となるわけです。
この仕組みを図で示すと以下のようになりなす。
ビジネス開始時


悪徳グループは一般論としては正しいトップダウン情報と極端な事例であるボトムアップ情報を巧妙に組み合わせて、限りなく自然な意志決定を促すのです。


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マインドコントロールの具体例(勧誘時)

マインドコントロールの仕組み』では、人は意志決定に際してトップ・ダウン情報とボトム・アップ情報という二種類の情報を使い、そこに他人が関与・制御することができれば思い通りの意志決定をさせることもできることを示しました。

それではこのメカニズムをネットワークビジネスの悪徳グループはどのように利用しているのでしょうか。いろいろな方法やプロセスがありますが、勧誘時には以下のような枠組みを取っていると考えられます。

まずトップ・ダウン情報として、
「成功者は成功の仕方を知っている」という信念を植え付けます。
極めて常識的な考えであり、この事自体に疑問を持つ人は少ないはずです。
また同時にセットで伝えられるのが、
「一般人は成功の仕方を知らない」や「一般人は成功することを妬む」等となります。
ターゲットとなる人が以降受けるであろう周りからのの反対に対して予め免疫をつくっておくのです。

これに対してボトム・アップ情報は、
「この会社(グループ)には成功者がたくさんいる」という感覚的な刺激になります。
そしてそれを裏付ける証拠を次から次へと提示されるわけです。
ベンツに乗っているところを見せられたり、海外旅行の写真を見せられたり、あるいは別の世界の成功者と同じことを語られたり、と言ったことです。
また「この会社(グループ)の人たちといると楽しい」も重要な要素でしょう。人は楽しくさえあれば多少の疑わしさには目をつぶってしまうものだからです。ですからカルト宗教同様、ネットワークビジネスの悪徳グループは楽しいイベント事が数多く設けられています。

この両方の情報を十分に刷り込まれた状態で「成功したい」という夢に対する答えを探そうとすると、自然とそれは「この会社のビジネスをやるべき」となるわけです。

これを図に示すと次のようになります。
マインドコントロールの仕組み②

これがネットワークビジネスの悪徳グループが勧誘時に用いるマインドコントロールの仕組みです。


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マインドコントロールの仕組み

マインドコントロールという言葉には、どこぞの秘密結社が地下室で秘儀を用いながら犠牲者を催眠状態に陥らせていく、といった神秘的なイメージがつきまといます。

しかしマインドコントロールをそのような非日常的なものとして曖昧に捉えてしまってはそれ以上理解を深めることはできませんし、悪意ある人間からマインドコントロールを仕掛けられたときに対抗する術を組み立てることができません。マインドコントロールは日常の意思決定あるいは情報処理の観点からとらえられるべきでしょう。

人間心理を「情報処理」の観点から捉える心理学では、人間は意思決定過程において二種類の情報を利用しているとし、それらをボトム・アップ情報とトップ・ダウン情報と呼んでいます。
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ボトム・アップ情報とは、情報処理時に五感を通じて外界から取り入れる情報のことである。つまり、意思決定中に、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、皮膚感覚によって処理される情報のことをさす。一方、トップ・ダウン情報とは、それまでに前もって獲得されていた記憶構造の中に貯蔵されている情報のことである。それは、つまり意思決定中に処理される「知識」や「信念」をさす。
『マインドコントロールとは何か(P58)/西田公昭/紀伊國屋書店』

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この考え方を簡単に図にするとこうなります。
意志決定プロセス

そしてこの両方の情報を意図的に制御することで、相手を意のままにしようと企てることをマインドコントロールと言います。
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操作者がこれら二種類の情報を完全に制することができれば、人が論理的に情報処理する限り、思い通りの意思決定をさせることになる。
たとえば、「何かの料理をつくる」という意思決定をさせるのに、「料理の材料(ボトム・アップ情報)」と「料理道具セット(トップ・ダウン情報)」、ともに指定したものを使わせておいて、「自由に考えて好きな料理をつくればよい」と、言っているようなものである。もちろん、食材と料理道具セットが指定されてしまえば、料理の内容はほぼ限定されてしまう。
もし新鮮な鯛が食材として選ばされて、使える道具が包丁だけしかなかったなら、まずほとんどの日本人なら、だれかに命令されなくても刺身を造るであろう。しかも「自分の頭で考えた」結果によってである。
マインド・コントロールは、個人がこのように通常おこなっている情報処理の特徴を巧みに利用しておこなわれるために、個人に選択の自由があるかのような幻想を見させることになり、本人やその周囲の人に気づきにくくさせてしまっている。
『マインドコントロールとは何か(P60)/西田公昭/紀伊國屋書店』

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例に挙げている料理の意志決定を図にすると次のようになります。
料理の意志決定


それではネットワークビジネスの悪徳グループが行うマインドコントロールでは、この仕組みをどのように使っているのでしょうか。引き続きこのコーナーでは、マインドコントロールの仕組みの具体的な応用の仕方について見ていきます。


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悪徳グループとカルト宗教の奇妙な類似

宗教っぽいことに問題はあるのか?』では宗教っぽいことではなく、カルト宗教っぽいグループがあり、そこがマインドコントロールの技術を用いることが問題だと指摘しました。

マインド・コントロール研究の権威である立正大学の西田公昭教授は破壊的カルト宗教の反社会性を4つの観点から説明していますが、この分類がネットワークビジネスの悪徳グループにも当てはまります。
以下、『マインド・コントロールとは何か(P16)/紀伊國屋書店』より引用します。

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①虚偽と欺瞞の組織
破壊的カルトは虚偽で形成された表向きの信念や、信念と矛盾する欺瞞に満ちた行動体系をもった組織的な集団である。(中略)メンバー獲得のときに、組織名やその活動内容や目的を隠し、一般に人が警戒心をもちにくい別のダミー組織を名乗って接近するという組織もある。あるいは心理的効果以外には客観的効果のない器具を過大に効果があるものだと称したり、実際には手に入らない莫大な金が「濡れてで粟」で入ると称したりする。

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まさにネットワークビジネスで問題となるブラインド勧誘とオーバートークそのものの記述です。当然これらの活動は法律(特定商取引法や薬事法)違反であり、刑事罰を受けることもありうる反社会的活動だと言えます。

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②入会・脱会の自由剥奪
破壊的カルトは、無論、表向きには入・脱会は個人の自由であると主張する。もしあるメンバーが、何らかの事由によりその集団にとどまる魅力を失って離脱したいと思っても、身体的、精神的、あるいは社会的に離脱していくことが困難な状況が形成されている。破壊的カルトでは個人がメンバーになるときに、貯蓄や不動産なども含む全財産を組織内に寄付させ、家族や親族、仲のよい友人も含めて、通常なら手助けしてくれる対人関係を完全に断ち切らせてしまうことが多い。それによって、もしある個人がその組織を脱会しようとしても、新しい生活の支援となる社会的・経済的基盤が存在しないのである。

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一部の悪徳グループのリーダーは傘下のダウンラインに対して、ビジネス活動に反対する家族・友人を「敵・ドリームキラー」と見做し、縁を切ることを唆します。それによってグループへの依存状態を強め、長期間に渡って奉仕させるためだと考えられます。

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③組織のトップとメンバーとの間の支配・隷属関係
破壊的カルトのメンバーは、組織内での役割や仕事のみならず、衣・食・住にいたるまでの生活のあらゆる面で組織のトップや上位メンバーの命令を受け、それに服従させられており、ほかの行動の選択肢がない。集団が獲得する全ての富は、組織のトップやごく一部の幹部が独占し、そのほかの多くのメンバーは、自らの労働によって得られた組織の収益の再配分をほとんど受けることなく、奴隷のように惜しみない労働力を提供している。

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ネットワークビジネスでは成功を体現したリーダーの影響力は絶大です。ダウンラインは自身も成功に近づきたいために、リーダーやアップラインの指示や指導を事細かに受け入れます。また、ネットワークビジネスは仕組み上、必然的に富がリーダーに集中します。大部分のディストリビューターが個人事業主として報酬無しの活動に励みます。

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④公共と利益と福祉に反する活動
破壊的カルトの活動が、彼らと信念を共有しない私たちの社会に、さまざまな脅威となる行動となって現れることがある。それらの活動は、経済的問題と社会的秩序問題に分けてとらえられるが、いずれも彼らの論理ではその信念にもとづいて、なかば「やむをえない」、あるいは「結局はためになる」ことだと正当化されてしまっている。

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さすがに破壊的カルトのように社会的秩序を脅かすグループは無いでしょう。しかし、強引な勧誘や借金の強要などによる経済的問題は継続的に引き起こしており、国民生活センターにも毎年10,000件を超える苦情が届いています(参考URL)。

これらの奇妙なまでの類似性は、一部の悪徳グループをカルト宗教と同じ性質を持つ反社会的組織であると特定するに十分では無いでしょうか。


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ネットワークビジネスはなぜ宗教っぽいのか?②

ネットワークビジネスはなぜ宗教っぽいのか?① 』では組織均衡論という経営理論を紹介し、組織の全ての参加者は与えるものと獲得するもののバランスが取れている必要があるという事を説明しました。

この理論をネットワークビジネス、特に最も重要な参加者であるディストリビューターに当てはめてみましょう。ディストリビューター達はネットワークビジネスに参加することによって、何を与え、何を獲得しているのでしょうか?

まず、ネットワークビジネス組織の要件について確認しておきます。
・ディストリビューターは指数計算的に増加していく。(参考記事
・ダウンラインからアップラインへ利益が配分される。(参考記事
・ディストリビューターは個人事業主であり、収入は保証されない。(参考記事

これらの要件からネットワークビジネスは次のような組織特性を持つようになります。
①ネットワークビジネスはピラミッド型の組織構造を持つ
②ピラミッドの上部に位置する少数のディストリビューターに報酬が集中する。
③ピラミッドの下部に位置する多数のディストリビューターは報酬が保証されない。
これは最低限の収入が保証されている通常の会社等の組織とは全く異なる組織特性だと言えるでしょう。

このことは統計的にも裏付けられています。
ニュースキン社の公開している情報では、
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『日本における「アクティブ ディストリビューター数」は、月当たりの平均で167,111人。「ボーナスを取得したディストリビューター数」は、月当たりの平均で23,795人(アクティブ ディストリビューターの14.2%)でした。』
ニュースキン社のサイト

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とあり、さらにボーナスを受け取っている23,795人のうち13,293人は2,627円/月という報酬額しか受け取っていないのです。これでは必要経費も賄えないでしょう。

しかし組織均衡論が教えるところでは、金銭を受け取らずに勧誘・販売行為という労働力を与えるディストリビューターであっても何かしらの価値を獲得しているはずなのです。
それは必然的に金銭以外の価値、つまり『精神的価値』が中心になります。
具体的には、
・夢、すなわち莫大な権利収入を得られる可能性
・成功者に近づくことで高められる人間性
・価値観を共有できる素晴らしい仲間との出会い
・素晴らしい商品を周りに広めることによる社会貢献
などが挙げられるでしょう。
これらの精神的価値は宗教が与える“救い・安心”や“魂の向上”といった価値に類似します。違いと言えばネットワークビジネスでは現世利益のみを提示するのに対して、宗教では来世でのご利益が加わるところでしょうか。

この関係を図で示すと以下のようになります。
DT均衡図

逆に言うと末端ディストリビューターに与える価値をどのように設計するかが主宰会社の腕の見せ所になります。
いずれにしても、これらの精神的価値に惹きつけられた者がディストリビューターになるのですからネットワークビジネスは宗教っぽくならざるを得ません。 ネットワークビジネスが持つ宗教っぽさというのは、その仕組みが生み出す必然的結果だと言えるのです。


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ネットワークビジネスはなぜ宗教っぽいのか?①

宗教っぽいことに問題はあるのか?』のエントリーでは、反社会的集団であるカルト宗教に類似したグループが存在することが問題であると指摘しました。

しかし反社会性があるか無いかに関わらず、ネットワークビジネスには他のビジネスと比べて明らかに宗教的な雰囲気が付きまといます。
その理由について2回にわたって投稿していきますが、今回は「組織均衡論」という経営理論を共有しておきます。

組織均衡論はバーナードという経営学者が唱えた理論ですが、基本的な考え方はいたって常識的です。
それは「組織が存在しているときは、そこに参加している人に対して利益を与えることと、参加者が組織に対して利益を与えることの均衡が保たれている」というものです。簡単に言うとあらゆる組織は関係者の間とのギブアンドテイクのバランスが取れている必要があるという事です。

例えば、
・顧客という参加者は「代金」を与える代わりに「商品」を獲得する。
・株主という参加者は「資本」を与える代わりに「配当金」を獲得する。
・従業員という参加者は「労働力」を与える代わりに「賃金」を獲得する。
・供給業者という参加者は「原材料」を与える代わりに「代金」を獲得する。
これら全てのバランスが取れていて始めて、組織は存続できます。
逆に言うとこれらの参加者との間でギブアンドテイクのバランスを取るのが経営者の仕事になるわけです。

図で示すと下記のようになります。
組織均衡図


極めて汎用性が高く、様々な組織と参加者の関係を分析するのに有用な考え方です。

この理論を前提として『ネットワークビジネスはなぜ宗教っぽいのか?② 』ではネットワークビジネスが宗教っぽい理由について考えていきます。


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宗教っぽいことに問題があるのか?

外部の人間がネットワークビジネスに取り組んでいる人や集団を表現するときに「宗教っぽい」といった表現をすることがあります。
とは言え、集団が熱狂的な情熱をもって物事に取り組んでいると宗教っぽくみられることはネットワークビジネスに限らずあることで、それ自体は何ら問題はありません。

しかし、ネットワークビジネスでは集団の情熱を一部のトップ層が自らの利益のために利用することが頻繁におきます(ニュースキンで言えばLOI連鎖を推し進めるグループなどはそれに当てはまるでしょう)。
なぜならネットワークビジネスではアップラインはダウンラインの行動に強い影響を与えることができる一方で、ダウンラインの行動や結果に対して法的・経済的な責任を負う必要が無いからです(参考記事『ネットワークビジネスの仕組み②』)。

以下はそのような組織の本質を的確に表わした文章です。
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(破壊的カルトで)活動するメンバーたちは、これらの合法的で時には崇高ともいえるような表向きの集団の目標をただただ一生懸命に遂行しているつもりだけの、純粋で誠実な人々によって大部分が占められている。このことは経験的な知見だが、まちがっても組織そのものの性格と、それを構成するメンバーの各人の人格とを混同してはならない。この点ははっきり注意しておかなければならない。つまり彼ら自身、自らの集団の舞台裏の構造や活動はおろか、舞台裏の存在すら知らない場合が普通なのである。
(中略)
それぞれの集団の真の活動目的が何なのか、はっきり見えないことが多い。それは組織のトップ・リーダー、あるいは一部のメンバーしか知りえないことであったりする。しかし、彼らの実際の活動の様子やその活動から生み出された事象から推察する限り、どんなに経済的活動の自由を尊重して偏見的推察を排除しても、表向きの目的とはまったく異なる目的があるように思えてならない。少なくとも組織のトップや一部の幹部には別の目的があると考えないと、彼らの活動は納得のいく論理的な説明がつかないのである。
『マインド・コントロールとは何か(P12~13)/西田公昭/紀伊國屋書店』

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別の目的(ほとんどの場合はお金儲け)をもったリーダー達がメンバーの情熱を私的に利用しようとすれば、それはもはや宗教ではなくカルト宗教だと言った方がいいでしょう。
つまり、宗教っぽいことではなくカルト宗教っぽいグループがあることが問題なのです。

カルト宗教は反社会性をその特徴としていますが、反社会的活動を行うことをメンバーを納得させるために心理操作のテクニックであるマインドコントロールを多用します。
以降このコーナーではその具体例を見ていきます。


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マインド・コントロールとは何かマインド・コントロールとは何か
(1995/08)
西田 公昭

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プロフィール

ゆんた

Author:ゆんた
経営コンサルタントの管理人がニュースキン(Nu skin)やアムウェイ(Amway)を始めとするネットワークビジネス、マルチ商法、マルチレベルマーケティング、MLMの仕組みを解き明かします。

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